yu-un obayashi collection 2006-2011

以前、何度かお知らせしていた分厚い本というのが出来上がったので、写真を上げておきます。
非売品なので実際に見ていただけるチャンスがないのが申し訳ないのですが、雰囲気だけでも...。

たて20.5cm×よこ22.5cmの上製本、288ページ、図版枚数226点。アートディレクションは下田理恵さんです。

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厚みがあります。足に落としたらきっと痛いです。
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中身はこんな感じ。
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これらは自分の作品ではありません。
他人の作品を撮って面白いのかと聞かれたら、いやこれが意外に面白かったんですよね。

写真は光と物しかうつすことができなくて、撮影しているときは壁に掛けられているアート作品も、なにか、たんなる平たく矩形のものだなぁと思えることがあります。けれど一方で作品というのは、言葉や、歴史や、物がひとつづきに結びつけられてかたちを成す星座です。
よい写真、よくない写真という判断系から、よい作品(or展示)、よくない作品(or展示)という判断の系へ飛び上がるうえでの、この星座の編み方について、この一連の撮影は多いに刺激となりました。




"A TREE OF NIGHT"について

先日、写真のサイトphoto-eyeにて「A TREE OF NIGHT」のブックレビューが掲載されました。英文のサイトはこちら(→)で読めます。そのうち時間があったら部分的に翻訳したものをここに転載したいのですが、それはさておき。

前回のエントリーにて、5月のBroiler Spaceでの個展の、2階部分の展示についてお伝えすると書いておきながら早2ヶ月。2階ではこの「A TREE OF NIGHT」の写真を展示していました。ですのでここであらためて、展示の様子と、そのもととなっている写真集について、簡単に書いておきたいと思います。

 先のレビューにも書かれているとおり、この写真集はスナップ写真と、視覚障害者のための点字小説の接写写真から構成されています。点字小説は、トルーマン・カポーティの短編集『夜の樹(A Tree of Night)』です。

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なぜ『夜の樹』なのかとは出版後にたびたび聞かれることです。
まず世界的によく知られていて、そのタイトルだけで「あの小説では」と類推できるようなものであることがひとつ。また時代が現代または戦後のものであること。そして長編よりも短編、できれば悲劇ではないこと、など。そんな要件を満たし、かつ点字小説化されているものをと探したときに、それほど多くの選択肢があったあけではありません。もちろん、僕がこの短編集をその表題も含め好きだったというのがいちばんの理由かもしれません。
その文中から、とくに視覚的な描写、聴覚的な描写がされている箇所を抜き出しました。例えば、
雨が降っている、という部分や、水の音、かごのなかの鳥、あるいは死者の目について。
そのリストを頭にとどめて対応する写真を撮影していますが、その一致の仕方はまちまちです。

さて、Broiler Spaceでの展示の様子です。
点字の写真は、このために作り付けた台上に置き、その頁と対応する写真を壁に貼りました。

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壁面の写真と机上の写真というのは、展示における引き続きの僕の関心事です。
視覚障害者が点字本を読むとき、本は机の上に置いて、指で触れてその凹凸をなぞるものです。
この写真集を展示空間に展開するとき、壁と机で置き分けるというのは、ややあざといのではと思うくらいに自然に出てきた方法でした。
これが成功していたかどうかは、実際に展示をご覧いただいた方々の判断に委ねるしかありませんが。

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写真と盲目ということについて考え始めたのは、じつは僕が写真を撮り始める前にまで遡ることなのですが、Sophie Calleの「The Blind」という作品を見たことが大きなきっかけです(最初に図録で見て、その後、実際に展示で見ることができました)。どのような作品なのかは、検索すれば出てきますし、水戸芸術館の「脱走する写真」展(1990)の図録もあるのでここでは説明しませんが、とても印象深い作品です。その後自ら写真を撮るようになりましたが、この作品のことはずっと頭にありました。

目が見えない人が "みる" 世界を見ようとすること、それは「写真ってなんだろう」という問いを延長していったときの、一方の突き当たりにある扉なのだと思います。そして今回の写真集と展示を経たからといって、すぐにその扉の前から引き返すわけではありません。

 あとひとつ。この写真集の制作中に出会い、ノートに書き写しておいた言葉を孫引きしておきます。『写真との対話』という本のなかで、キュー・リーという方の論文に引用されていた、スーザン・シュルターという生まれつき盲目の英作文教師の言葉です。

"読書は私の写真です。読むとき、人々が写真を見て感じると私が想像する感覚を、私も味わっています。読んでいる文章の場所に、運ばれていくのです。読書は私とすべての場所をむすぶ橋です。"(『写真との対話』図書刊行会 P.179)


「遠近」展について

先日終了した、Broiler Spaceでの展示の様子を載せておきます。
今回の展示は1Fと2Fがあり、それぞれ別のことを扱う展示となっていました。

1Fの展示は、先の
地震がモチーフです。
3月11日の地震と、とくにその直後に起こった原発事故は多くの人にとってそうであるように、自分もその余波が及ぶ場所にいたことで、否応なく生活に深く入り込んできました。津波が押し寄せ、さらわれて瓦礫の山と化した町の映像・写真や、超望遠で撮られた原発の事故の様子をテレビ新聞でショックとともに繰り返しただただ傍観するしかない2ヶ月のうちに、このタイミングで展示という機会があるなら、いま頭と網膜を覆っているこのことを扱わなければ、作り手として不誠実だろうと考えました。自分ができる最良のことは作品を作ることでしょうから。

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1Fの入り口近くに掛けた、遠景の山並みの写真2点は、4月に福島で撮ったものです。
画面の中央、水平線の真ん中に福島第一原発があります。昼間の写真(上右)はそこから18km離れた山の上からのもので、かすかに白い建屋が見えています。もうひとつの夕暮れの写真(上左)は30kmの地点から。もう原発は手前の山にかくれて見えません。

もっと近づいて、屋根の吹き飛んだ建屋を撮ることも可能だったでしょう。でも僕にはこの、何度も報道で見聞きした20km,
30kmという仮想の線、この遠さが、とても切実な距離のように思えたのです。


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壁をへだてて奥のパートは被災地で撮影したものではありません。

地震以前にこの展示のために準備していたものと地震後に撮ったもので構成しています。
写真を見ることは、そこに写っているものに見入ると同時につねになにか別のことを思い出すことです。この震災後2ヶ月のあいだで、なにかを見ること、写真を見ること、そしてそこから想起されるものが、散り散りに崩れながら変化していくようでした。

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原発事故の映像に接して感じたことのひとつは、まさに起こりつつあることがもう目には見えないんだということ。そんなことは今に始まったことではないのですが、この印象は、以前スーパーコンピューター(4点組の右下)を撮影したときにも感じたことです。

いま起きていることは見えないし写真には写らない。
そんな話をしたら、人から「写真の無力を感じたのか」と聞かれ、そのことが先日来、妙に気になっていたのだけれど、無力感とかではないといまは思います。

そう、地震の後。つい、無力と言ってしまうのです。
けれどはじめから誰かの力になれると思って写真を撮っていたとでも?
写真になにがしか他を動かす力があったとしても、それは自分が写真を撮る理由ではなかったし、たぶん、自分が写真をはじめた時、すでに写真は無力だったのだと思います。
僕は、自分にとって、いま、抜き差しのならないなにかを見たい
だけです。


(2Fの展示はこんな感じでした。詳細はまた後日アップします。)
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「日本写真集の現在」展の様子

去る4月27日から5月8日まで、パリのle balで開催された「日本写真集の現在 (Japanese Photobooks Now)」展の様子です。

この展示では、過去ほぼ10年の間に日本国内で出版された100冊ほどの写真集を16のカテゴリーでわけて、来場者が手にとって頁を捲れるようになっていたそうです。僕は2冊を出品しましたが、『A TREE OF NIGHT』は「Silence & Sight」というくくりで。もう一冊の『光と重力』は...なんだろう?聞くの忘れてしまいました

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Brusselsでのチャリティスライドショー

昨年末に、ベルギーはブリュッセル在住のアーティスト、當間智さんから、現地での何名かの日本の写真家によるスライドショーへの参加の誘いをいただきました。そのスライドショーが催されたのが2月末の話。

そして3月11日の地震があり、こちらが日々の余震と情報に揺られ流されているところに、再び當間さんからスライドショー再上映の打診が。今度は被災地への支援金チャリティのためとのことでした。
まずなにより當間さんのその迅速な行動力に、そしてそれを受け入れ実行した会場運営者に、ただただ脱帽し、感謝するばかりです。

そのショーも3月29日にブリュッセルの
Espace photographique Contretypeという会場で行われ、盛況のうちに終了したとのこと。当日の記録写真を送ってもらったので紹介します。↓

会場で供されたらしい、おにぎり。握ったのは右端で腕組む女子。か、かわいい...

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なにより会場となったContretypeの雰囲気が素晴らしいザ・アールヌーボー!
ブリュッセルはアールヌーボー調の建物が多いですよね。

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こんな言葉を掲げて。「Loin du Japon - 遥か日本へ」
ちなみにこのスライドショーの参加者は、自分の他には尾黒久美さん、仙石朋子さん、原美樹子さんなど16名でした。↓

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会場に置かれた募金箱。ここでの収益はベルギーの赤十字を通して日本赤十字に寄付されるそうです。↓
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こうして実際に写真で見ることが出来ると、日本での震災被害にこうして集まって、思いを送ってくれている人たちがいるんだという実感が起こります。すごいことだなぁと。



地震について

東北太平洋地震から2週間経ち、日々の生活は平静に戻りつつあるけれど、地震発生以前の感覚・思考に戻ることはないなと感じはじめています。被災地の状況は、情報が明らかになるほどに悲惨の度を増しつつあり、それらがもとに復旧されるまでの時間を思って、呆然とします。

この地震で被災され、お亡くなりになられた方々のご冥福を、夜、目を閉じる前、ただただ心より祈念するのみです。
また、いまも避難され、物資の届かないなかで心労を重ねられている方々、ひとりでも多くの生命を救い、不安をのぞこうと力を尽くされている方々に、一日も早く、安心のできる日が来ること、希望を持って眠ることができる日が訪れることを願ってやみません。

自分にはなにができるだろうと考えます。
無力だと思い知り、そうに違いないけれど、無力だと呟いて、ひとまずこの事態を対岸へサスペンドしておくことがなかなかできません。
募金や節電といった直近でできる具体的な行動の後に、自分ができること。

ものを作るというのは、リマインダーとして在り続けることだと思っています。
忘れそうになっても、何度も何度も思い出させてくれるものを作る人間として。
多くのことを知り、なんども考えをめぐらし、それをもとになにかを作る。それに接した人が、なにかを思い出してくれるように。
こんな態度はあまりに遠回り、もしくは消極的でとるに足らないことかもしれませんが、それは現時点で、まずは自分に課すことのできる選択だと思っています。
そして今後も、ほんとうにそれしかないのかと、絶えず考え続けていかなければいけないことだと思っています。




束見本

ずいぶん前に、厚い本も作っていますと告知しましたが、その束見本がやっと出来上がってきました。
縦20.7cm×幅22.7cm、288頁の上製本です。自立するほど分厚い。

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手にしっくりとおさまり、なんとなく大事にしたいと思わせる大きさ。ハードカバーだといっそう、中身がぎゅっと詰まっている印象があり、大きさを主張しすぎず、といって写真がぎりぎり小さすぎないサイズ。個人的にいちばん好きな写真集の判型です。
この判型、おそらく紙取り(印刷用紙の裁断)の都合がよいという理由もあるのでしょうが、このサイズの写真集をいくつか持っています。

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20cm前後の、ほぼ正方形。これに近い写真集といわれて思い出すのは、他にRobert Frank「The Americans」や須田一政「風姿花伝」があります(ということは朝日ソノラマのシリーズ全てか)。
今回は自分の作品の写真集ではありませんが、いつか自分でもこの判型で本を作ってみたい、そう思わせます。

ちなみに今回の本の完成は3月末〜4月頭の予定。残念ながら非売ですが。

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「ひととき」展 installation views

1月12日より1月23日まで、千葉・稲毛で開催中の「ひととき」展の展示の様子はこんな感じ↓。
日没後に撮ったので暗いですが、日中は窓から外光が入るようになっています。


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HAPPY NEW YEAR 2011

あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
厳しさゆえの、代えがたい興奮とともに過ごす一年でありますよう。

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千葉・旧神谷伝兵衛 稲毛別荘

来年の1月12日から千葉の稲毛で催されるちょっとしたグループショーに参加させてもらうことになり、先日会場の下見に伺いました。今回の会場は「旧神谷伝兵衛 稲毛別荘」という、大正7年に建てられた近代建築と、その隣にある「千葉市民ギャラリー・いなげ」の両方を使ったものになるのだそう。
この神谷伝兵衛さん、ぼくはまったく知らなかったのですが、浅草の神谷バーってありますね、あれの前身の酒屋を作られた方なのだそうで、日本でかなり早い時期からワイン作りをされて財を成した方だそうです。
この稲毛別荘はいわゆる戦前の洋館で、壁が厚くてひやりとした空間のあるいい会場なんですが、残念ながら自分の写真はとなりの市民ギャラリーの展示室に並べられます。

このグループショー、タイトルは「ひと と き」で、木がテーマなのだそう。自分は写真集「光と重力」から木の写真のみを選んで10点前後を出品する予定です。詳細は後日。

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