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村瀬恭子展と98歳

愛知県の豊田市美術館で村瀬恭子展を見た。ちょっとついでに寄って行こうという感じだったのだけれど、見てよかった。
ほぼ10年間の作家の集中力と揺れを通観できるとても良い展示。図録も良かった。
豊田市美術館は、行きたいと思っていてこれまでチャンスがなかったのだけど、この村瀬恭子展で初めての訪問となったのはかえって良かったかもしれない。この美術館のこの空間で、且つこの作家でなければ得られないなにか。
美術館は谷口吉生の建築です。
東博の法隆寺館がと ても好きで、丸亀もいいが、ここもとてもよい美術館だったすごく稚拙な言い方だけど、開放的で、でも空気がシンとしていて、なんか頭が良くなったような気にさせてくれるような、とてもよい空間だと思う。採光もすばらしい。

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で、そもそも「ついで」というのは、また岐阜へ行くことになったからで、祖父98回目の誕生日。
明治最終年生まれにしてジョン・ケージやポロックと同い年の祖父。口ぐせは「貯金せえよ」。
本人、嬉しいのか嬉しくないのか不明のまま、17時から夕飯を食べるという日々の習慣を崩さず簡単なお祝いの夕餉。
ほんとに100歳になったら、写真集でも作るかな。

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直島やら豊島やら

ちょっとした仕事で瀬戸内海の島々を巡ってきました。
小豆島、直島、豊島、犬島を一日ずつ転々として撮影した4日間です。ただあいにく天気が最悪で、東京でも雪が降ったようですが、瀬戸内海も吹雪きました。
夏に使う写真を撮りにいって雪じゃどうしようもないな、ということで、直島では港の目の前にあるしょぼいたこ焼き屋(兼飲みや)でビール飲みながらみぞれが止むのを待っていました。店内には数枚のサイン色紙が張ってあり、あーこんな店にも有名人来るんだな...。ふっと天井を見上げるとそこにも色紙が張り付けてあり、おや?..おやおや?...なんか見たことのある筆跡。
「OSAMU KANEMURA」
あー来たんですね。

その他、007記念館(必見)に立ち寄ったり、手延べそうめんの工場を見学したり。
こういう、いろいろな条件下で慌ただしく撮らなくちゃいけない撮影は、やっぱりデジタルとかだと便利かもなぁと寒さも手伝ってやや弱気に帰路についたところ、コダック、カラー印画紙生産中止の情報。唐突過ぎやしないか。
コダックはつい先日、新しい4×5と8×10のフィルムを発売したばっかりなのに、やってることが支離滅裂。あるいはロールの印画紙は続けるってことなのかな。とにかく残っているスープラは大事に使っていかないと。
やれやれだ。


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岐阜

先日、岐阜までドライブ。岐阜市に97歳になった祖父が暮らしていて、年に何回かは顔を見せに行ってます。顔を見せに行くついでに撮影もする(..正確には撮影のついでに顔を見せに行く..)ので、岐阜で撮った写真というのがけっこうある。今回の写真集にも岐阜で撮った写真が2点入っているし、真昼にも1点入ってました。岐阜を足がかりに周辺の県へも数度行ったので、撮影をするときの中継地みたいにもさせてもらっています。

自分の場合、地名はまったく関係なくて、それが岐阜や他のどこかである必然性はない場所ばかり撮っているのだけれど、でもそれぞれの写真は、当たり前だが、まさにそこへ行かなかったら撮れなかったわけで。たまに、こんなものを撮るために何百キロも車を走らせたのかと徒労感におそわれますが、移動を強いることですこし日常から抜け出て、写真を撮るモードへ落ちていくという面もあり、こればかりは仕方がない。


ところで祖父は今回もいたって元気で、昨年末に医者からそろそろ覚悟してくださいと宣告されたにもかかわらず、完全復活。行くたびに本人は、わしゃもう長くない、とこぼすが、そんなことをここ10年くらい言い続けているはず。もうこうなったら、目指せ100歳。

画像は16年前に岐阜で撮ったネガをスキャンしたもの。退色してるなぁ。昔のネガを街のDPE店でスキャンするとけっこうきれいで(この写真はきれいじゃないが)、そういうのをモニターで眺めたりスライドショーで見るのはおもしろい。

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露口・こんぴら・高橋由一

とある写真展 のオープニングに伺うために愛媛・久万高原町へ。
久万は松山から車で1時間ほど、高知県と接する高原の町。
かなり山深い土地なのに、ここへコンテンポラリーな作家を招いて一年間のプロジェクトを組み、展示をさせるというその意気に率直に驚く。見応えのある展示です。

オープニングの後は山を下って松山市内にある有名なバー「露口」へ。
51年前から使われているカウンターとその奥に立ち続けているマスター、8オンスグラスで飲む濃いめの角のハイボール。角なんて最も廉価な普通の酒なのに、なぜか美味しい。

四国だし、ついでにと香川の直島と金刀比羅宮へも行くことに。

金刀比羅宮は昔から芸術の庇護者でもあるようで、なかなかの作品を所有しています。最近、真筆とはっきりした若沖の障壁画もありますがこれは非公開。
見たかったのは円山応挙晩年の筆が見られる表書院の襖絵と、高橋由一が奉納した油画27点。

高橋由一といえば「鮭」ですが、ここには「豆腐」があります。まな板の上に置かれた豆腐と焼き豆腐と油揚げ、の絵。
あるいは「なまり節」という、鰹のなまり節の絵。由一は当時まだ知られていなかった西洋油画の啓蒙喧伝のために、高尚高級ではなく、あえてこれらのごく日常的な画題を選んだと言われています。
が、それにしたって諧謔交じりなんじゃないか?という先入観はあくまで実物を目の前にするまで。


重い光。目の前にあるものの詳細をとにかく描き出そうとする粘っこい執着。
油絵具も、油絵具用の硬い毛の筆すらも容易には手に入らなかった時代に、自宅(らしい)の暗い片隅で焼き豆腐を凝視して、その焦げ目やまな板の濡れ感をなんとか描写するべく筆をさまよわせる姿を想像すると、凄みすら憶えます。


ここの27点が現存する高橋由一作品の3分の1というから、寡作の人だったのか?と調べてみたら、どうも晩年は洋画排斥運動や写真術の登場で不遇だったらしく、散失してしまったのかな。
写真と言えば、最近ふたたび掘り起こされている田本研造や小川一真は高橋由一とほぼ同時代人。一方でクールベも同時代人。写真術登場直後のこういった人々が最近気になっている。


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能代へ

とりあえず、撮影旅行のことなど。
以前から気になっていた秋田県の能代市と男鹿半島へカメラ携え行ってきました。

まず男鹿半島から入りましたが、なぜここかと言えば、んー。日本海に突き出た半島の風情が好き、と言えなくもないのですが、たしかに行ってみると能登半島にも似て、陸続きなのに離島のような、澄みきった寂しさがただよっています、そしてとにかく海がきれい。

イエス. ゼイ アー ナマハゲーズ
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今回のいちばんの目的は、能代市にある広大なクロマツ林を見ること。日本三大松原のひとつと聞いてましたが、あとのふたつ、三保や気比に比べても想像以上に広大な敷地で、松林というよりもう森です。
結局一日半をこの松林に費やして、8×10で8枚撮影する。

こういう森で写真を撮っていると、たまにすれ違う3人中2人に「鳥ですか?」と聞かれる。「いえ、この森を」とか「この木を」と正直にお答えするとたいてい怪訝な顔をされるのだけれど、せっかく人気のない場所で出会ったわけだし、できれば相手の腑に落ちる会話がしたい。それで最近は「ええ、シジュウカラを」とか「イヌワシを」とか適当なことを言ってみたりするのですが、それでなんとなく納得顔をされるのが逆に不思議。しかしおじさん(おばさん)が立ち去った後に、しょうもない嘘をついたと言う小罪悪感が残って集中の邪魔をするので、もっと上手な応対ができないものかいつも考えてしまう。
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